増税について

第2章 増税で税収は減る!?

— 消費税アップで税収ダウンのしくみ —

◆景気悪化で税収も悪化

今、世の中はデフレ不況の真っ最中。ここ10年以上モノの値段がどんどん安くなってゆき、稼げるお金もどんどん減っていくという状況が続いている。こんな時の増税は絶対してはいけないことなんだ。その理由を説明しよう。

景気のよしあしは、世間の人たちの財布の中身(=可処分所得)にかかっている。個人が自由に使える所得の総額を「可処分所得」と呼ぶよ。これは、給与やボーナスなどの個人所得から、支払い義務のある税金や社会保険料などを差し引いた、残りの手取り収入のことだ。

世間の人たちは懐具合が寂しくなれば、みんなモノを買うのを我慢するようになる。みんながモノを買わなくなれば、売る方も、つくる方も、儲からない。そして、みんなの懐具合はますます寂しくなっていく。

増税するということは、すなわち国民の可処分所得を減らすこと。すると、景気後退のサイクルが加速してしまうんだ。

それを証明して見せたのが、ハーバード大学のアルベルト・アレシナ教授だ。教授は1960~1994年までに財政再建に取り組んだOECD加盟国20カ国を調査した。成功例は16、失敗例は46だった。そして、失敗例の共通点は、景気が回復するより前に増税をおこなったことだったんだ。

日本でもかつて消費税を3%から5%に値上げしたことをきっかけに、景気が崩れてしまった。国の経済規模を測る指標のGDP(国内総生産)は、戦後、右肩上がりに上がり続けてきたけれど、消費税が5%に引き上げられた1997年の翌年からはずっと低迷を続けているよ。

【名目GDPの推移(1980~2011)】

[IMF – World Economic Outlookより作成]

名目GDP(国内総生産)が、日本で最高だったのは、1997年の515.6兆円。2011年度の予測値は469.5兆円と、ピーク時から46兆円も下がっている。

★さらに詳しく知りたい人に

消費税率を上げても税収は上がらない!

【一般会計税収と消費税収の推移】

  [財務省のデータから作成]

消費税率が3%から5%に値上げされたのが1997年。上のグラフの黄色い線を見ると、消費税収入がそこで急に上がっていることがわかるだろう。でも、赤い線の一般会計税収を見てほしい。これは所得税・法人税なども含めた税収全体だ。こちらは1997年にがくんと下がり、その後も増減しつつじわじわ下がっている。

消費税率を上げたところで税収が上がらないことは、こうした過去のデータで証明済みなんだ。

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